私がやっている初級日本語を教える際の授業の流れ(ウォーミングアップから宿題まで)を紹介していきます。
まだまだ日本語が上手ではない初級の学習者にとっては、毎回の日本語の授業で緊張してしまったり、うまく日本語を使って話せないことが多いので、私は授業に入る前に簡単な雑談(アイスブレイク)をして、緊張をときほぐして話しやすい雰囲気を作るようにしています。
例えば、「週末はどこに行きましたか」とか「日本語の勉強をする前に何をしましたか」とか「今日の仕事は忙しかったですか」とか「朝/昼/夜ごはんはもう食べましたか」などの簡単な文法を使った簡単な質問です。
アイスブレイクに関しては、私はとっても大切に思っていて、別記事でやり方などを詳しく説明しているので興味のある方はぜひこちらを参考にしてみてください。(⇒【初級日本語】授業前のアイスブレイクのやり方)
私はこちらの本を使って総合教科書にはないよりリアルな日本語を、授業前10分程度練習させています。
本書のいいところはまずは言語が豊富な点です。英語・中国語・韓国語・インドネシア語・タイ語・ベトナム語版と6か国語もあるんです!英語・中国語・韓国語版とインドネシア・タイ語・ベトナム語版の2冊があるので、学習者の言語に合った本を購入してもらって、毎回練習しています。
そして、初級・中級・上級、更には就職・アルバイト・進学面接編といったレベル別の書籍があるのもいいですね。初級学習者が上級になるまで継続して使い続けられるってすごくないですか?これなら毎日の授業の流れが作れるし、総合教科書には載っていないリアルな日本語をいろいろな場面別(家族、友人、知らない人、恋人同士の会話、ビジネス会話)で学習者に合わせた練習ができるのもいいです。
シャドーイングの主な使い方としては、
① まずは音源を聞く。
② 次にTが読んでSにリピートしてもらう。
③ AとBの役割ごとに練習する。
④ AとBの役割を変えてもう一度練習する。
⑤ CDを聞きながらシャドーイングする。
授業前10分程度の練習なので、文法説明や言葉の説明の時間ってありませんよね。ここでは新しい文型や言葉があったとしてもサラッと説明するだけで、あとは学習者の自分の母国語の訳を見てもらっています。
毎回違うスクリプトにしてもいいのですが、私は4回~5回ぐらいは同じスクリプトにしています。理由は、簡単で使える文を暗記してもらって、日常生活での瞬発力を鍛えるためです。会話の沈黙や間をつなぐ「うーん」や「ええと」などの「フィラー」と呼ばれる表現も自然に養われるのでこの方法はおすすめです。スクリプトは生徒のレベルや生活に合わせて10分程度でできるように3~4会話文をピックアップして使用しています。
その他の言語や中~上級編、就職・アルバイト・進学面接編はこちらからどうぞ。
本書をおすすめする理由や中身の紹介は別記事で載せてありますので、興味のある方はぜひ見てみてください。(→「Shadowing 日本語を話そう!」の紹介)
JLPTを控えている学生にはこちらの文字語彙を使って、授業で習った語彙や文法をJLPTの問題形式で解く練習を10分程度しています。
JLPTの数か月前にやってもいいのですが、私はできるだけ早い段階からJLPTの問題形式に慣れてもらい、授業で習ったことがJLPTでどんな風に問われているのかを実際にやってもらいます。
自分が習ったことが実際のテストに出て、正解できるとうれしいですよね。JLPTは年に2回しかチャンスがないので、数か月前の勉強では忘れてしまっていることも多いかと思います。授業のたびに少しずつやってあげることで記憶にも残るし、普段の授業のやる気にもつながると思います。
こちらの本の使い方は、Sの分かる問題をピックアップして問題を解いてもらい、口頭で答え合わせをします。間違った問題に関しては、簡単に口頭で説明し、授業のどこで習ったか(例えば「~と」はみんなの日本語25課)を教えて学習者が自分で復習できるようにします。あまり長々と説明してしまうと新しい文型を導入する時間がなくなってしまうので、「どこを復習すればこの問題が解けるか」だけを教えてあげるといいと思います。
新出語彙は前の授業の時に導入だけして、家で覚えてきてもらい、授業内できちんと覚えているかどうか確認するようにしています。
語彙の教え方には色々あるかと思いますが、私は授業をスムーズに進めるためにあらかじめ覚えてきてもらうようにしています。そのほうが、文型練習の時に文型に集中させることができるからです。それから、毎回の授業の時にイラストを見せて語彙を答えさせるという確認方法で語彙チェックをしていきます。
すべての語彙ではないですが各課ごと重要な語彙をピックアップして作った語彙シートがありますので、このプリントを活用してもらうと便利かと思います。(みんなの日本語)
ただこのプリントはすべての語彙ではないので、すべての語彙や母国語での文法の説明が知りたい!という学習者にはこちらを使ってもらった方がいいと思います。すべての語彙が集約されていて尚且つ、ローマ字・英語・中国語・韓国語・スペイン語・ポルトガル語・フランス語・タイ語・インドネシア語・ロシア語・ドイツ語・ベトナム語・イタリア語・ビルマ語版があります。
私は英語で文法を説明したりすることがあるので英語版を持っています。日本語を教える時、どうしても説明しにくい日本語ってありますよね。例えば「よろしくお願いします」などの日本語特有の表現や、文法で言ったら自動詞・他動詞などが挙げられると思います。私はそんな時こちらの本を使って、どうやって教えたらわかりやすいか模索しています。学習者だけでなく教師も持っておくと便利な本だと思います。
語彙の教え方も別記事で詳しく説明しているので、興味のある方はこちらからどうぞ。(⇒語彙の教え方)
教師がいくら頑張って工夫して教えたとしても、学習者自身が覚えてきてくれなければ意味がありませんよね。そこで、学習者には当サイトが開発した単語学習アプリで学習してもらえるといいと思います。
このアプリは、「みんなの日本語初級Ⅰ・Ⅱ」やJLPTのN5・N4に対応していて、尚且つLangoalの語彙シートと同じイラストを採用しています!音声や例文もあるので、一人でただひたすら単語を覚えるよりも楽しく効率的に学べると思います。
アプリに関しては別記事で詳しく紹介していますので、興味のある方はぜひこちらを参考にして見てください!(→Langoal Appの使い方)
文型は基本的に導入→練習→応用で教えていきます。みんなの日本語の教案はすべて公開していますのでそちらをご覧ください。
初級日本語ではイラストを使って場面を提示して、どんなシチュエーションでその文型を使うかを意識しながら教えていくことが多いので、自作のイラストを使うことが多いのですが、すべてのイラストはまだ作り切れていないので、その時は以下の本を使っています。
みんなの日本語で教えるなら一冊持っておいても損はないと思います。みんなの日本語の各課の導入をするときにぴったりの絵が入っています。私は導入はこのイラストを使うことが多いです。
初級日本語の教科書の中ではそれほどメジャーな方ではないのかもしれませんが、こちらの教科書は練習とイラストがセットになっているのですごく使いやすいです。パソコンに取り込んで、拡大をして練習で使ったり宿題に使ったりしています。
その課が終わってしまって、次回のレッスンが新しい課になるときに新出語彙を導入します。語彙に関しては前述したとおり、基本的に発音や使い方だけを導入して、次のレッスンまでに学習者に覚えてきてもらい、次のレッスンで覚えたかどうか確認するという形をとっています。詳しい語彙導入の流れはこちらからどうぞ。(⇒語彙の教え方)
宿題ではレベルや目的、やる気に応じて使い分けています。
宿題をする時間をそんなに取れない学生や、趣味で日本語を勉強している人には教科書の各課の問題を宿題に出しています。
1課あたり2ページ(見開き1ページ)で構成されていて、各課の重要な文型がピックアップされているので、きちんと理解しているか確認することができます。
自宅で自習する習慣をつけてほしいので、最低限教科書の問題と語彙だけは宿題でやってもらうようにしています。
会話中心で学んでいる学生や、宿題を出してほしい!というやる気のある学生にはこちらを宿題に出しています。
1課あたり5~6ページで構成されていて、イラストを見ながら自分で文章を作っていく問題が多いかと思います。分量が多く答えの自由度が高いので、宿題の添削は少し大変ですが、授業が理解できていれば確実に解ける問題がほとんどです。そういった点で宿題⇒添削⇒返却のみで十分理解できる内容になっているので、宿題に出す本として非常に使いやすいんじゃないかと思います。
ただ漢字+フリガナで書かれていて少しフリガナが小さいので、漢字圏じゃない学生には少し読みにくいんじゃないかと思い、私は少し大きめにコピーして配布したりしています。
内容も分かりやすく、学習の早い段階から書く力や文章を作る練習ができるので、私が一番よく宿題として使っている本です!
JLPT取得を目指している学生や、文法をしっかり勉強したい!という学生にはこちらを宿題に出しています。
こちらのいいところは、授業内では少し見逃しがちな助詞(「は」「が」「を」「に」等)を問う問題や、副詞(「よく」「なかなか」「だんだん」等)を問う問題があるところです。こちらで問われている問題がしっかり分かるようになるぐらいの初級日本語の基礎ができれば、中級や上級で躓くことが少なくなると思います。
単なる形の変換練習ではなく、文章の中でどの形を使うか考えさせる問題や、助詞・副詞等細かいところを問う問題があるので、難易度は高めだと思います。よくできる学生でも100%正解することは難しいと思います。そういった点から、宿題⇒添削⇒返却+説明が必要になってくるので、毎回の宿題では少し使い辛く、私はまとめのテストなどで使うことが多いです。
以上、私がやっている初級日本語を教える際の授業の流れを紹介しました。参考にしてもらえたらうれしいです!